真空管たった1球で無線通信が出来るトランシーバーが戦後、アマチュア無線再開間もない頃の製作集の中に見つけました。(昭和28年発行の古書)
私が、アマチュア無線を始める頃、この製作本を見て単球のトランシーバーに興味を持ちました。そして50年ほどの年月を経て、再度その本を見た時に試作を思いつきました。性能や実用性どうなのか、検証を兼ねて製作にかかりました。
電池管、3A5を1球だけ使ったトランシーバーを試作しました。
トランシーバーの回路図です。 昭和28年の製作集記事を元に当局なりの改良点を盛り込んで使いやすい回路に改定して製作しました。
このトランシーバーに使用する真空管3A5です。 アメリカRCA製です。
電池で動作する、戦後の携帯ラジオや無線機用に開発された超低消費電力な真空管です。
真空管の規格表です。 低周波、高周波で動作する双三極管 カソードの無い直熱管
トランシーバーの内部を上から見た写真です。
1球の真空管は、受信時、超再生検波と低周波増幅をして受話器から音が聞こえます。
送信時は、送話器からの音声信号を増幅して、発振した回路に変調をかけます。
送受信周波数は、50.500MHzに設定しています。
送信出力は、0.1W得られました。 受信感度は、1μVと高感度です。
電波型式は、AM変調です。 発信管に変調をかけるのでFM成分も有り。
真空管回路周辺の写真です。 大きなコイルは、50MHzに同調しています。
トランスや多極スイッチを使って巧みに送信と受信が切り替わるように考えられています。
電池収納部です。1.5Vの単三乾電池、2本で真空管のフィラメントを照らします。
9Vの積層乾電池を7個直列につないで、63Vを得てプレートに供給します。
ケースの蓋をした外観です。鉄製のケース、送受話器は電話交換装置からの流用品
バーニアダイヤルで周波数の調整、円筒形のつまみで音量調整をします。
小さいスイッチで送信と受信の切り替えをします。
【まとめ】動作を確認しながら製作を進めました。送信出力も充分ありますし、変調もうまくかかります。また、受信感度は現在販売されているメーカー製の無線機と同等の高感度でした。 このトランシーバーの方式は認定を得ることが出来ず、室内実験にとどまりましたが、実用性は充分あることが解りました。
※このトランシーバーの製作は、CQham radio別冊QEX 2020年9月秋号の表紙とP112~に製作記事が掲載されています。